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「八月三日」の裏側

 このお話を書き始めたのは四年ほど前です。まろちゃんとのミーティングで「記憶喪失の主人公なんかどうだろう」と盛り上がり、書くのならちゃんと調べようと記憶の障害について勉強を始めました。


 勉強して分かったのは、生半可な描写では読者様を納得させることができないということ。映画では端折ってしまうだろう難しい説明も含めて読者様に読んでいただきたい。それにはどうしたらいいだろうと悩みました。


 そして第一章(タイムスリップした過去)、第二章(現代)、第三章(過去~現代)の順番で物語を構成しました。過去を一番最初にもってくることで、第二章が謎解きになる。白崎さんに一体何が? 一ノ瀬さんはどうしてそこまで必死なんだろう? と疑問を抱え第二章のページをめくれば、記憶障害についての説明も全て「謎解きの答え」として読んでもらえる。


 もし第二章を先頭にした時系列の物語だったとすれば、一ノ瀬さんと先輩介護士渡辺さんのやりとり部分は「長ったらしい説明」と判断され流し読みされるかもしれませんし、一ノ瀬さんと白崎さんのシーンも「暗くて重い話だ」と感じてしまうかもしれない。最悪、途中で読むのをやめてしまう読者様もいらっしゃるかもしれないと考えました。


 読者様に楽しんでもらいたい。変な言い方ですが読むことにストレスを感じて欲しくない。スラスラ気持ちよく読んで欲しいですし、読了した時、「ああ、良かった!」と爽やかな気持ちになって欲しい。その思いを常に念頭に置き書き進めました。


 今その努力が実を結び、書籍として手元に「八月三日」がある幸せを噛み締めています。




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